伶鳴 (剤型:煎じ薬)

品名(効能・効果)
 【伶鳴】 耳鳴り
処方(松鶴堂加減)
 [青皮] [枳実] 大黄 連翹 防風 木香 山梔子 甘草 当帰 川きゅう 知母 地黄 黄柏 黄ごん 柴胡 香附子   [ ]の生薬は、万病回春・衆方規矩による。
原典(効能・効果)
 【滋腎通耳湯】(原典:万病回春) 耳鳴り、難聴(漢方処方応用の実際より)
処方(松鶴堂加減)
 当帰 川きゅう 知母 地黄 黄柏 黄ごん 柴胡 香附子 芍薬 白し

処方解説
 ・当帰・川きゅう・地黄は、補血・強壮の作用があり血行を良くします。
 ・地黄・知母・黄柏は、腎中の熱を清熱し、神経の鎮静と消炎の効果があります。
 ・青皮・枳実・黄ごん・黄柏・山梔子は、心下の痞えを去り、消化機能を改善します。
 ・連翹・防風は、上部のうつ熱をさまします。
 ・柴胡・香附子・木香は、気滞をを去り、気をめぐらせます。
 ・甘草は、諸薬の調整をします。

使用目標
 ・過労、加齢、病後などによってでた耳鳴り。
 ・腎虚の症状があるひとで、原因不明の耳鳴りに。

松鶴堂加減について
 伶鳴は、滋腎通耳湯から芍薬・白しを去って、大黄、連翹、防風、木香、山梔子、甘草を加味したものです。青皮、枳実の加味については、原典の万病回春に、「胸膈快からざるには、青皮、枳穀を少しばかり加う」とあり、これに従って青皮、枳実を加えています。
 原典名(滋腎通耳湯)からもわかるように、腎を潤して耳を通ず(耳鳴り・難聴を治す)という薬ですが、胃腸の弱い方も服用し易いよう、また耳鳴りを気にして神経質になり胃腸を病んだりすることから、伶鳴では、さらに、健胃作用のある生薬、気を巡らす作用のある生薬が、多数加味されています。

一口メモ
 耳鳴りは、外部に音源がないのに音が聞こえる現象で、外耳、中耳、内耳、中枢聴覚路のどこかの部位の異常によって発生する現象と思われますが、その発生機序・部位はまだ不明で、その治療方法も、現在のところ確率されていません。(対症療法的治療で、ある程度の効果はあるがいずれも一時的なものです。)
 漢方薬では、全身の症状を考慮して服用してもらうので、完全に耳鳴りが治らなくても、耳鳴りに随伴する症状(めまい、頭重感、頭をしめつけられる感じなど)、またその他の症状が軽快し、耳鳴りがさほど気にならなくなって、QOLが高まってきます。

使用上の注意
 添付文書に記載の「使用上の注意」を併せて必ずご参照ください。

参考事項
1)「耳鳴り」は、伶鳴のほか 順血湯、神扶、脳快でも、効果があります。漢方薬では、全身症状を考慮して薬を選んでください。
 [順血湯] 効能・効果:脳溢血、眩暈、頭痛、耳鳴り
 [神快]  効能・効果:身体虚弱の傾向のあるものの次の諸症:高血圧に伴う随伴症状(のぼせ、肩こり、耳鳴り、頭重)
 [脳快]  効能・効果:比較的体力があり、のぼせ気味で、顔面紅潮し、精神不安で便秘の傾向のあるものの次の諸症(のぼせ、肩こり、耳鳴り、耳鳴り、頭重、不眠、不安)、鼻血 、痔出血、便秘、更年期障害、血の道症

2)黄帝内経に「腎は耳を主る。腎は精を蔵し、脱精する者は耳を聾す」とあります。

参考文献
1)漢方処方応用の実際   山田光胤 南山堂
2)漢方の臨床   第51巻第10号(2004)
3)衆方規矩   曲直瀬道三 著・池尻勝 編 燎原