大山漢方堂薬局
厳選 建林松鶴堂の一般用漢方薬
(顆粒剤・散剤・煎じ薬)
1)建林松鶴堂 「鼻療(びりょう)」
2)建林松鶴堂 「扁鵲(へんせき)」
3)建林松鶴堂 「肝生(かんせい)」
4)建林松鶴堂 「威徳(いとく)」
5)建林松鶴堂 「意発(いはつ)散剤」
6)建林松鶴堂 「雲胆(うんたん)」
7)建林松鶴堂 「露恵(ろけい)」
8)建林松鶴堂 「意発(いはつ)顆粒」
9)建林松鶴堂 「快生(かいせい)」
10)建林松鶴堂 「回陽(かいよう)」
11)建林松鶴堂 「鶴姿(かくし)」
12)建林松鶴堂 「鶴寿(かくじゅ)」
13)建林松鶴堂 「花月(かげつ)」
14)建林松鶴堂 「奇応(きおう)」
15)建林松鶴堂 「休意(きゅうい)」
16)建林松鶴堂 「恵賜(けいし)」
17)建林松鶴堂 「恵痔(けいじ)」
18)建林松鶴堂 「光風(こうふう)」
19)建林松鶴堂 「光明(こうめい)」
20)建林松鶴堂 「春香(しゅんこう)」
21)建林松鶴堂 「潤勝散(じゅんしょうさん)」
22)建林松鶴堂 「順成(じゅんせい)」
23)建林松鶴堂 「真仙(しんせん)」
24)建林松鶴堂 「神扶(しんぷ)」
25)建林松鶴堂 「心龍(しんりゅう)」
26)建林松鶴堂 「清心(せいしん)」
27)建林松鶴堂 「調寿(ちょうじゅ)」
28)建林松鶴堂 「天香(てんこう)」
29)建林松鶴堂 「豊心(ほうしん)」
30)建林松鶴堂 「妙光(みょうこう)」
31)建林松鶴堂 「涌出(ゆうしゅつ)」
32)建林松鶴堂 「離雲(りうん)」
33)建林松鶴堂 「凌雲(りょううん)」
34)建林松鶴堂 「加味根(かみこん)」
35)建林松鶴堂 「灌頂(かんちょう)」
36)建林松鶴堂 「センナダイオウ錠」
37)建林松鶴堂 「常楽(じょうらく)」
38)建林松鶴堂 「精禍(せいか)」
39)建林松鶴堂 「乳泉(にゅうせん)」
大山漢方堂薬局 厳選漢方薬
不安、不眠
花月(剤型:エキス顆粒)
製品名(効能・効果)
花月
緊張感・興奮感・いらいら感の鎮静、上記に伴う頭重・疲労倦怠感の緩和
構成生薬(松鶴堂加減)
芍薬
桔梗
沢瀉
細辛
防己
石膏
香附子
陳皮
蘇葉
生姜
原処方(効能・効果)
香蘇散
(原典:和剤局方)
胃腸虚弱で、神経質の人の風邪の初期(210処方適応症)
処方解説
・香附子・蘇葉は、気のうっ滞を発散させ、蘇葉には胃腸を整える作用があります。
・香附子・陳皮は、芳香性健胃薬で、胃機能を整えつつ気をめぐらします。
・甘草は、諸薬の働きを助けます。
・生姜は、発汗・健胃作用があります。
・細辛は、風寒を発散させて身体を温め、気をめぐらせます。
・桔梗は、諸薬の薬効を上部に引き上げる作用があります。
・芍薬は、鎮静・鎮痛作用があります。
・石膏は、気を下ろし、頭痛などをとります。
・防己・沢瀉は、体内の水分の調節をします。
使用目標
・頭冒(頭が何かで覆われているいる感じ)があり、頭髪をかきむしる等のしぐさをする。
・頭痛、身体痛があって、神経症のもの。
・心配事があって気がめいっている。
・うつ気味で、頭痛、頭重、不眠がある。
・マタニティーブルー(出産後の不安、集中力低下等を伴う感情不安定状態)。
松鶴堂加減について
花月は、香蘇散に芍薬、桔梗、沢瀉、細辛、防己、石膏を加えたものです。
香蘇散は、散気快気の主方といわれるもので、気のうっ滞を発散し気をめぐらせ、主として神経性諸疾患を治すものです。具体的には、胃腸のあまり丈夫でない人の抑うつ状態、いらいら、やる気がでない、頭痛、不眠、軽い風邪といった症状に使います。饗庭家口訣他にもあるように、香蘇散は「気滞気鬱による諸病に使うが加味の力をもってその効をとぐる」ということで、さまざまな加味のなされる処方です。
従って、花月では、抑うつなど気が沈みがちという症状があって、さらに頭痛、身体痛を伴う諸症に対応するよう、石膏、防己、芍薬など消炎・鎮痛、鎮静作用のある生薬を多く加味してあります。
一口メモ
・花月は、気が沈んでいるタイプで、声が小さく話にまとまりがない感じ。これに対し、清心(加味逍遥散)はやたらと愁訴を訴える感じである。
使用上の注意
添付文書に記載の「使用上の注意」を併せて必ずご参照ください。
参考文献
1)漢方診療医典 大塚敬節・矢数道明・清水籐太郎 南山堂
2)漢方後世要方解説 矢数道明 医道の日本社
3)漢薬の臨床適応 神戸中医学研究会 医師薬出版
4)中医処方解説 神戸中医学研究会 医師薬出版
5)漢方診療のレッスン 花輪壽彦 金原出版
雲胆(エキス顆粒) (剤型:エキス顆粒)
品名(効能・効果)
雲胆
加味温胆湯
(原典:衆方規矩)
胃腸が虚弱なものの次の諸症:神経症、不眠症
(210処方適応症)
処方(松鶴堂加減)
遠志
玄参
大棗
陳皮
半夏 生姜 黄連 茯苓 甘草 竹じょ 酸棗仁 枳実
人参 地黄
麦門冬 山梔子 当帰 辰砂
原典(効能・効果)
加味温胆湯
千金方
万病回春
注:210処方では、麦門冬、山梔子、当帰、辰砂の4生薬は入っていません。
(注)加味温胆湯は、210処方のひとつですが、出典により配合生薬に違いがあります。
詳細:参考事項参照
処方解説
・半夏は、鎮静、制吐、去痰の作用があり、竹じょと組んで鎮静に働きます。
・竹じょは、鎮静作用があります。
・茯苓は、鎮静作用があり、消化管内の余分な水分をさばきます。
・枳実は、陳皮と共に胃腸機能を調整し、茯苓の効果を強めます。
・大棗・甘草は、諸薬の調和をし、また鎮静の効があります。
・酸棗仁・遠志は、不眠・精神不安に効があります。
・玄参・人参・地黄は、新陳代謝を亢めて体力を補います。
使用目標
・大病後などで神経が弱っている人の不眠に。
・普段から胃腸が弱く、神経過敏となっている人。
雲胆(エキス顆粒)について
雲胆(エキス顆粒)は、加味温胆湯で210処方のひとつですが、加味温胆湯には複数の出典があり、加味方に違いがあります。
注:現在、「加味温胆湯」で販売されているものは、雲胆(エキス顆粒)と同じ配合生薬のものです。
雲胆(エキス顆粒)は、「衆方規矩」を原典としたもので、温胆湯に遠志、玄参、人参、地黄、酸棗仁、大棗が加味されています。
「衆方規矩 不寐門」には加味温胆湯について、次の様に書かれています。
-病後虚煩して睡臥することを得ず、及び胆虚怯し、事に触れて驚き易く短期悸乏するを治す。-
この文から、加味温胆湯が病後に神経が昂ぶって不眠、神経症となっているものに使われていたことがわかります。
また、温胆湯は、二陳湯が基本となっているので胃腸の弱い人に適用できます。
なお、遠志が配合された加味温胆湯は、臨床の場でアルツハイマー症の物忘れの患者に用いられ、痴呆(アルツハイマー症)との関連の研究発表が注目を集めています。
使用上の注意
添付文書に記載の「使用上の注意」を併せて必ずご参照ください。
参考事項
〈アルツハイマー症関連の研究発表〉
注:先にも記したように、加味温胆湯は、出典により配合生薬に違いがありますが、以下に記すアルツハイマー症関連の研究発表に使われている加味温胆湯は、すべて雲胆(エキス顆粒)と同じ遠志の入った処方のものです。
1、「アルツハイマー病における加味温胆湯の効果」
漢方と最新治療・10(4);313-318,2001 鈴木朋子、荒井啓行、佐々木英忠
・アルツハイマー症20例に投与(コントロール32例)、MMSE(初期の痴呆診断プログラム)で認知能力確認・PETによる脳代謝測定。9例でMMSE上昇改善があり、上昇がみられなかった者も徘徊、失禁、嚥下困難などが改善。有効例では、腹診上全例に臍傍悸があり、性格的には生真面目で、易怒性、固執性が強い等の特徴がある。
2、「アルツハイマー症に対する加味温胆湯の臨床効果の検討」
第50回 日本東洋医学会学術大会講演要旨集 第49巻第6号 1999 4月
北里研究所・ 東洋医学総合研究所 矢部武士、鳥居塚和生、山田陽城
・特筆すべき副作用なし。有効例全例に臍傍悸を認め、全体に易怒性、切迫感、焦燥感あるものに有効の印象(20例、5〜13か月服用)
3、アルツハイマー型痴呆の漢方療法」 第12回和漢薬学会大会要旨集 1995
山本孝之(福祉村病院長寿医学研究所所長)
・加味温胆湯は、老化の進んだ虚証のSDAT(アルツハイマー型老年痴呆)に有効であった。(70名に8週間投与)
4.「痴呆と加味温胆湯」 漢方と最新治療・10 (3);229-234、2001 山田陽城・矢部武士
・地方モデル動物において、加味温胆湯エキスで、神経栄養因子であるChATの活性増加作用及びアセチルコリン系の神経細胞の機能賦活作用を有するNGFへの誘導作用は、遠志ぬきのエキスでは見られなかった。かつ、遠志単独エキスでも顕著なChAT活性増加作用、NGF誘導作用が認められたが、加味温胆湯よりは活性が低い。
・加味温胆湯は少なくとも初期から中期にかけてのAD(アルツハイマー病)の進行抑制効果を有すると考えられる。
・加味温胆湯は、アセチルコリン系の神経細胞に対して作用し、アセチルコリン量を増加させるだけでなく、神経栄養因子様の作用を示すことから神経細胞の脱落を減少させ、進行を防止する可能性のある点で極めて興味深い漢方処方である。
5、「中枢コリン作動系に及ぼす加味温胆湯の影響」
北里研究所・東洋医学総合研究所 山田陽城
・加味温胆湯は、ChAT、NGFの発現を直接増加させる。
6、「加味温胆湯と構成生薬のラット前脳基底野培養神経改善作用」
第10回和漢薬学会大会要旨集 1993
北里研究所・東洋医学総合研究所 矢部武士、鳥居塚和生、山田陽城
・加味温胆湯構成生薬のうちで、遠志、茯苓、枳実がラット前脳基底野培養細胞中のChAT活性上昇が認められ、一味抜き加味温胆湯では遠志抜き加味温胆湯においてのみ上昇効果がほぼ完全に抑制された。
7、「漢方薬加味温胆湯の抗痴呆作用の分子機序」
上原記念生命科学財団研究報告集 13:48−50(1999)
北里研究所・東洋医学総合研究所 矢部武士
・ラットにおいて、加味温胆湯により細胞内cyclicAMP量の増加が認められ、中枢神経系に対する作用の発現にcAMP−PKA(cAMP依存性カイネース)経路が重要な役割を果たしていることが示唆された。
<遠志について>
遠志は、「神農本草経」上品に収載されている生薬で、次のように記載されています。
「治ガイ逆傷中。補不足。利九竅。益知耳目聰明。不忘強志倍力。久服軽身不老。」
参考文献
1)漢方処方応用の実際 山田光胤 南山堂
2)漢方診療のレッスン 花輪壽彦 金原書店
3)漢方処方解説 矢数道明 創元社
4)漢薬の臨床応用 神戸中医学研究所 医歯薬出版
5)中医処方解説 神戸中医学研究所 医歯薬出版
[肝生]
適応症
急・慢性肝炎、肝臓肥大、胆のう炎、黄疸、肝機能障害
成分
1日分3包(1包 2.0g)中、下記の生薬から製した乾燥エキス2.01gを含有
サンソウニン・・1.46g
ウバイ 〃
サンシン 〃
ガイヨウ 〃
キジツ 〃
ニンジン 〃
シャゼンシ 〃
ソウハクヒ 〃
キッピ 〃
シュクシャ 〃
ケイヒ ・・・・・・0.37g
ダイオウ 〃
用法・用量
成人(15才以上)1回1包を1日3回、食間に服用
起源:松鶴堂オリジナル製剤(大正年間)
民間薬 ‘艾葉’に注目してのもの
使用目標:適応症の通りですが、多くの後世方の処方と同様、証を問いません・
・健康診断でAST、ALTまたは?‐GTPがひっかかったなどというようなケースでは、短期間で効果を見ることが多い。
処方解説
艾葉の優れた止血効果に注目してつくられた‘肝生’ですが、構成生薬の組み合わせの解明には、さらに肝の病について、『金匱要略』に述べられた次の箇所が大きなヒントになります。
「肝の病は、補うに酸を用い、助けるに焦苦を用い、益すに甘味の薬を用いて、之を調う。」
「酸は肝に入り、焦苦は心に入り、甘は脾に入り、脾能く腎を傷る。腎気微弱なれば、即ち水行らず、水行らざれば、即ち心火の気盛んなり。即ち肺を傷る。肺傷らるれば、即ち金気行らず、金気行らざれば、即ち肝気盛んなり。即ち肝自ずから癒ゆ。此れ肝 を治するに脾を補うの要妙なり。」
これは、五行説に基づいた考え方ですが、肝臓疾患には、酸味の生薬に苦味の生薬、甘味の生薬を組み合わせると良い、言い換えれば、肝疾患には、肝のみでなく、肝と相生、相克関係にある心、脾も補うのが良いということになります。
これを念頭において、肝生の構成生薬の味、性、働きを見てみると肝生が、先に述べたような五行説に従った組み合わせ(酸、苦、甘)になっているのがわかります。更に組み合わされた個々の生薬の働きが伝統的にも、科学的にも肝臓・胆のうの機能回復に効果があることもわかると思います。特に、艾葉は肝疾患に共通して、必ず起こる門脈のうっ血、出血を止血する効果があります。
こんな場合も・・
まれに、肝生を服用されて1ヶ月以内に、逆にAST、ALTの数値が一度高くなる場合があります。普通は、そのまま服用を続けても心配ありません。しばらくすると、数値が下がり始めます。
ただ、あまり数値が高くなった場合、またそれを気にされる方には、服用してもらってください。
その他
悪酔い防止に、お酒を飲む前にお勧めします。
肝炎の発見に
急性肝炎は別としても、肝疾患は最も自覚症状の少ない疾患のひとつで、そのため疾患発見のほとんどは、検診や献血時です。
しかし、検診を受けてない人、検査値が少々高くても自覚症状がないからという人では自覚症状に気づいたときにはかなり進行が進んでいるということになりかねません。ちょっと気をつけて、次のような症状に注意してみてください。
[自覚症状] 食欲不振、悪心、嘔吐、全身倦怠感、疲労感、下痢または便秘、肩こり(特に右)腰痛、吐血、下血、痔出血
[他覚症状] 発熱、黄疸(特に、白目の黄疸化)、肝腫、脾腫、貧血、手掌紅斑、くも状血管腫、腹水、浮腫
建林松鶴堂 「研究報告」
・肝生湯(肝生加インチンコウ)のマウス・ラットにおける急性・亜急性毒性試験 (明薬大・赤塚ら、医薬研究所 Vol.14,bQ1973.)
肝生湯マウスでの急性毒性試験とラットによる亜急性毒性試験(13週間)を実施、一般状態に変化なく、血液、尿検査にも用量依存的差異や剖検、病理組織学的検査においても対照群との差異は認められなかった。
・慢性肝疾患に対する肝生湯(肝生加インチンコウ)の使用経験 (慶応大・土屋ら、医学と薬学 8(6):2219−2228,1982)
1)慢性肝炎28名を含めた肝疾患患者73例に対し、肝生湯を18週投与、全症例における検討で、血清GOT、GPTの有意な低下が認められる。
2)特にGOT、GPTが投与前に100K.U.以上の群で有意な低下がより明らかであった。
3)層別では、BsAg陰性群の血清GOTに有意な改善。
4)ZTTは4週、10週、12週に有意な低下。層別では慢性活動性肝炎、肝硬変群において低下傾向。
5)概括安全率は、98.6%で極めて高率で、長期投与が可能と考えられる。
6)GOT、GPTについて、慢性活動性肝炎群においては、投与2週間後一過性の上昇、その後徐々に低下。
伶鳴 (剤型:煎じ薬)
品名(効能・効果)
【伶鳴】 耳鳴り
処方(松鶴堂加減)
[青皮] [枳実] 大黄 連翹 防風 木香 山梔子 甘草 当帰 川きゅう 知母 地黄 黄柏 黄ごん 柴胡 香附子 [ ]の生薬は、万病回春・衆方規矩による。
原典(効能・効果)
【滋腎通耳湯】(原典:万病回春) 耳鳴り、難聴(漢方処方応用の実際より)
処方(松鶴堂加減)
当帰 川きゅう 知母 地黄 黄柏 黄ごん 柴胡 香附子 芍薬 白し
処方解説
・当帰・川きゅう・地黄は、補血・強壮の作用があり血行を良くします。
・地黄・知母・黄柏は、腎中の熱を清熱し、神経の鎮静と消炎の効果があります。
・青皮・枳実・黄ごん・黄柏・山梔子は、心下の痞えを去り、消化機能を改善します。
・連翹・防風は、上部のうつ熱をさまします。
・柴胡・香附子・木香は、気滞をを去り、気をめぐらせます。
・甘草は、諸薬の調整をします。
使用目標
・過労、加齢、病後などによってでた耳鳴り。
・腎虚の症状があるひとで、原因不明の耳鳴りに。
松鶴堂加減について
伶鳴は、滋腎通耳湯から芍薬・白しを去って、大黄、連翹、防風、木香、山梔子、甘草を加味したものです。青皮、枳実の加味については、原典の万病回春に、「胸膈快からざるには、青皮、枳穀を少しばかり加う」とあり、これに従って青皮、枳実を加えています。
原典名(滋腎通耳湯)からもわかるように、腎を潤して耳を通ず(耳鳴り・難聴を治す)という薬ですが、胃腸の弱い方も服用し易いよう、また耳鳴りを気にして神経質になり胃腸を病んだりすることから、伶鳴では、さらに、健胃作用のある生薬、気を巡らす作用のある生薬が、多数加味されています。
一口メモ
耳鳴りは、外部に音源がないのに音が聞こえる現象で、外耳、中耳、内耳、中枢聴覚路のどこかの部位の異常によって発生する現象と思われますが、その発生機序・部位はまだ不明で、その治療方法も、現在のところ確率されていません。(対症療法的治療で、ある程度の効果はあるがいずれも一時的なものです。)
漢方薬では、全身の症状を考慮して服用してもらうので、完全に耳鳴りが治らなくても、耳鳴りに随伴する症状(めまい、頭重感、頭をしめつけられる感じなど)、またその他の症状が軽快し、耳鳴りがさほど気にならなくなって、QOLが高まってきます。
使用上の注意
添付文書に記載の「使用上の注意」を併せて必ずご参照ください。
参考事項
1)「耳鳴り」は、伶鳴のほか 順血湯、神扶、脳快でも、効果があります。漢方薬では、全身症状を考慮して薬を選んでください。
[順血湯] 効能・効果:脳溢血、眩暈、頭痛、耳鳴り
[神快] 効能・効果:身体虚弱の傾向のあるものの次の諸症:高血圧に伴う随伴症状(のぼせ、肩こり、耳鳴り、頭重)
[脳快] 効能・効果:比較的体力があり、のぼせ気味で、顔面紅潮し、精神不安で便秘の傾向のあるものの次の諸症(のぼせ、肩こり、耳鳴り、耳鳴り、頭重、不眠、不安)、鼻血 、痔出血、便秘、更年期障害、血の道症
2)黄帝内経に「腎は耳を主る。腎は精を蔵し、脱精する者は耳を聾す」とあります。
参考文献
1)漢方処方応用の実際 山田光胤 南山堂
2)漢方の臨床 第51巻第10号(2004)
3)衆方規矩 曲直瀬道三 著・池尻勝 編 燎原
潤勝散
製品名(効能・効果)
[潤勝散]
胆石、胆のう炎の疼痛、胃腸痛、消化不良、肝臓病、腫気、食欲増進
構成生薬(松鶴堂加減)
木香末 桑白皮末 紫蘇子末 柴胡末 生姜末 半夏末 茯苓末 桂枝末 黄ごん末 人参末 甘草末 大棗末 良姜末
原処方(効能・効果)
[小柴胡湯] (原典:傷寒論・金匱要略)
はきけ、食欲不振、胃炎、胃腸虚弱、疲労感および風邪の後期の症状(210処方適応症)
構成生薬(松鶴堂加減)
柴胡末 生姜末 半夏末 黄ごん末 人参末 甘草末 大棗末
[良枳湯] (原典:治療大概)
胆石、胃痙攣の痛み、劇して嘔吐を伴うものに用いる(「明解漢方処方」より)
構成生薬(松鶴堂加減)
半夏末 茯苓末 桂枝末 甘草末 大棗末 良姜末 枳実末
※また、小柴胡湯合分心気飲‐芍薬・木通・燈心草・青皮・陳皮・大腹皮・きょう活+木香・良姜ともとれます。
処方解説
・柴胡・黄ごんの組み合わせで、胸脇の熱証とそれから派生する諸症状を去ります。
・半夏は生姜、大棗とともに脾胃の水毒を除いて、悪心、嘔吐を治します。
・人参は黄ごんとともに、脾胃の熱を去って、食欲不振、悪心を解消します。
・茯苓・大棗は、桂皮・甘草に協力するとともに利尿に働きます。
・茯苓はまた、半夏とともに上腹部の振水音、嘔吐を去ります。
・桂枝・良姜は組んで、寒証の上腹部痛に奏功し、大棗はこれに協力します。
・木香は、気をめぐらせ、痛みを去る作用があります。
・桑白皮は、利尿作用があり、むくみを去る作用があります。
・紫蘇子は、健胃作用のほか、気を下ろす作用があり腹部の膨満感や痛みをとります。
・甘草は、諸薬の調和をはかります。
使用目標
証に捉われず、下記のような症状の人に使います。
・慢性の胆のう炎。
・右(佐)上腹部、側腹部に激しい痛みがある。
・右(佐)季肋下に鈍痛、硬痛、圧痛がある。
・胆のう摘出手術後にも、右季肋部に痛みが続く。
松鶴堂加減について
潤勝散は、小柴胡湯と良枳湯を合方して、枳実を去り、木香、桑白皮、紫蘇子を加えたものです。
良枳湯は苓桂甘棗湯の加方で、苓桂甘棗湯は臍傍から発作的に突き上げる疼痛に使われるもので、胆のう炎、胆石、すい臓炎、胃・十二指腸潰瘍の痛みに応用されています。この苓桂甘棗湯に、半夏、枳実、良姜を加えて、それよりも痛みが激しく嘔吐を伴うものにも使えるようにしたものが良枳湯です。
小柴胡湯は慢性化して症状は軽いが経過が長引き、右脇下に鈍痛があるというものに使われますが、潤勝散は、小柴胡湯と良枳湯を合方することで、慢性のものだけではなく、急性期にも、症状のはげしいものにも使えるようにしています。
木香、紫蘇子は、気の滞りを解消するために加えてあります。
一口メモ
胆石になりやすい5つのF
Femail:女性 (妊娠や閉経などのホルモンの変化が影響するためと考えられます。)
Fatty:肥満 (標準体重の人に比較して、肥満の人の胆石発症率は3倍といわれます。)
Fourty:40代 (閉経期のホルモンバランスの変化)
Fecund:多産 (妊娠時のホルモンバランスの変化)
Fair:色白
参考事項
・漢方では、気のうっ滞が痛みを引き起こす原因にもなります。憤怒の気持ちをおなかに蓄積しないようにしましょう。
使用上の注意
添付文書に記載の「使用上の注意」を併せて必ずご参照してください。
<胆石の話>
動物性食品や油脂の摂取が増えるとともに、さまざまな生活習慣病が増えてきましたが、胆石症もその一つです。推定ですが、現在日本人の10〜20人に一人が「胆石持ち」といわれています。ただ、胆石症の半分は、サイレントストーンといわれる、石があっても症状の現われていないもので、検診やドッグで見つかるものです。
また、胆石は主成分によって、コレステロール胆石、ビリルビン胆石、黒色石などに分けられますが、胆石の種類も、かつてはビリルビン胆石が多かったのですが、現在はコレステロール胆石が約70%となっています。
<胆石をつくりやすい食事>
・高脂肪の摂りすぎ: コレステロールの高い食事をとると、胆汁に分泌されるコレステロールの量も多くなり、胆のうで濃縮されるときに過飽和となって、石をつくりやすくなります。
・食べ過ぎ: 食事量が多いと、胆汁を多く分泌しなければならず、胆のう・胆管の負担が増します。
・食事時間が不規則: 空腹時間が長いと、胆汁の貯留時間が増えて濃縮が進み、結石化を促進したり、胆のうに負担をかけ発作の原因になります。
使用上の注意
添付文書に記載の「使用上の注意」を併せて必ずご参照ください。
参考文献
1)漢方方意ノート 千葉古方漢方研究会 丸善
2)漢方後世要方解説 矢数道明 医道の日本社
3)浅田流漢方診療の実際 高橋道史 医道の日本社
4)漢方診療医典 大塚敬節・矢数道明・清水藤太郎 南山堂
5)漢方処方解説 矢数道明 創元社
6)漢薬の臨床応用 神戸中医学研究会 医歯葉出版
7)明解漢方処方 西岡一夫 ナニワ社
雲胆(エキス顆粒)
品名(効能・効果)
[雲胆]
加味温胆湯
(原典:衆方規矩)
胃腸が虚弱なものの次の諸症:神経症、不眠症
(210処方適応症)
処方(松鶴堂加減)
遠志 玄参 大棗 陳皮 半夏 茯苓 竹じょ 枳実 人参 生姜 甘草 酸棗仁 地黄
原典(効能・効果)
加味温胆湯
[千金方]
処方(松鶴堂加減)
陳皮 半夏 茯苓 竹じょ 枳実 生姜 甘草 酸棗仁 黄連
[万病回春]
処方(松鶴堂加減)
半夏 茯苓 竹じょ 枳実 生姜 甘草 酸棗仁 黄連 人参 地黄 麦門冬 当帰 山梔子 辰砂
注:210処方では、麦門冬、山梔子、当帰、辰砂の4生薬は入っていません。
(注)加味温胆湯は、210処方のひとつですが、出典により配合生薬に違いがあります。
詳細:参考事項参照
処方解説
・半夏は、鎮静、制吐、去痰の作用があり、竹じょと組んで鎮静に働きます。
・竹じょは、鎮静作用があります。
・茯苓は、鎮静作用があり、消化管内の余分な水分をさばきます。
・枳実は、陳皮と共に胃腸機能を調整し、茯苓の効果を強めます。
・大棗・甘草は、諸薬の調和をし、また鎮静の効があります。
・酸棗仁・遠志は、不眠・精神安定に効があります。
・玄参・人参・地黄は、新陳代謝を亢めて体力を補います。
使用目標
・大病後などで神経が弱っている人の不眠に。
・普段から胃腸が弱く、神経過敏となっている人。
雲胆(エキス顆粒)について
雲胆(エキス顆粒)は、加味温胆湯で210処方のひとつですが、加味温胆湯には複数の出典があり、加味方に違いがあります。
注:現在、「加味温胆湯」で販売されているものは、雲胆(エキス顆粒)と同じ配合生薬のものです。
雲胆(エキス顆粒)は、「衆方規矩」を原典としたもので、温胆湯に遠志、玄参、人参、地黄、酸棗仁、大棗が加味されています。
「衆方規矩 不寐門」には加味温胆湯について、次の様に書かれています。
― 病後虚煩して睡臥することを得ず、及び胆虚怯し、事に触れて驚き易く短気悸乏するを治す。 ―
この文から、加味温胆湯が病後に神経が昂ぶって不眠、神経症となっているものに使われていたことがわかります。
また、温胆湯は、二陳湯が基本となっているので胃腸の弱い人に適用できます。
なお、遠志が配合された加味温胆湯は、臨床の場でアルツハイマー症の物忘れの患者に用いられ、痴呆(アルツハイマー症)との関連の研究発表が注目を集めています。(詳細は参考事項)
使用上の注意
添付文書に記載の「使用上の注意」を併せて必ずご参照ください。
参考事項
〈アルツハイマー症関連の研究発表〉
注:先にも記したように、加味温胆湯は、出展により配合生薬に違いがありますが、以下に記すアルツハイマー症関連の研究発表に使われている加味温胆湯は、すべて雲胆(エキス顆粒)と同じ遠志の入った処方のものです。
1、「アルツハイマー病における加味温胆湯の効果」
漢方と最新治療・10(4);313-318,2001 鈴木朋子、荒井啓行、佐々木英忠
・アルツハイマー症20例に投与(コントロール32例)、MMSE(初期の痴呆診断プログラム)で認知能力確認・PETによる脳代謝測定。9例でMMSE上昇改善があり、上昇がみられなかった者も徘徊、失禁、嚥下困難などが改善。有効例では、服診上全例に臍傍悸があり、性格的には生真面目で、易怒性、固執性が強い等の特徴がある。
2、「アルツハイマー病に対する加味温胆湯の臨床効果の検討」
第50回 日本東洋医学会学術大会講演要旨集 弟49巻第6号 1999 4月
東北大学医学部老人科 鈴木朋子、荒井啓行、佐々木英忠
北里研究所・東洋医学総合研究所 矢部武士、鳥居塚和生、山田陽城
・特筆すべき副作用なし。有効例全例に臍傍悸を認め、全体に易怒性、切迫感、焦燥感あるものに有効の印象(20例、5〜13か月服用)
3、「アルツハイマー型痴呆の漢方療法」 第12回和漢薬学会大会要旨集 1995
山本孝之(福祉村病院長寿医学研究所所長)
・加味温胆湯は、老化の進んだ虚証のSDAT(アルツハイマー型老年痴呆)に有効であった。(70名に8週間投与)
4、「痴呆と加味温胆湯」 漢方と最新治療・10(3);229-234,2001 山田陽城・矢部武士
・痴呆モデル動物において、加味温胆湯エキスで、神経栄養因子であるChATの活性増加作用及びアセチルコリン系の神経細胞の機能賦活作用を有するNGFへの誘導作用は、遠志ぬきのエキスでは見られなかった。かつ、遠志単独エキスでも顕著なChAT活性増加作用、NGF誘導作用が認められたが、加味温胆湯よりは活性が低い。
・加味温胆湯は少なくとも初期から中期にかけてのAD(アルツハイマー病)の進行抑制効果を有すると考えられる。
・加味温胆湯は、アセチルコリン系の神経細胞に対して作用し、アセチルコリン量を増加させるだけでなく、神経栄養因子様の作用を示すことから神経細胞の脱落を減少させ、進行を防止する可能性のある点で極めて興味深い漢方処方である。
5、「中枢コリン作動系に及ぶす加味温胆湯の影響」
北里研究所・東洋医学総合研究所 山田陽城
・加味温胆湯は、ChAT、NGFの発現を直接増加させる。
6、「加味温胆湯と構成生薬のラット前脳基底野培養神経改善作用」
第10回和漢薬学会大会要旨集 1993
北里研究所・東洋医学総合研究所 矢部武士、鳥居塚和生、山田陽城
・加味温胆湯構成生薬のうちで、遠志、茯苓、枳実がラット前脳基底野培養細胞中のChAT活性上昇が認められ、一味抜き加味温胆湯では、遠志抜き加味温胆湯においてのみ上昇効果がほぼ完全に抑制された。
7、「漢方薬加味温胆湯の抗痴呆作用の分子機序」
上原記念生命科学財団研究報告集 13:48-50(1999)
北里研究所・東洋医学総合研究所 矢部武士
・ラットにおいて、加味温胆湯により細胞内cyclicAMP量の増加が認められ、中枢神経系に対する作用の発現にcAMP−PKA(cAMP依存性カイネース)経路が重要な役割を果たしていることが示唆された。
〈遠志について〉
遠志は、「神農本草経」上品に収載されている生薬で、次のように記載されています。「治がい逆傷中。補不足。除邪気。利九竅。益知耳目聰明。不忘強志倍力。久服軽身不老。」
参考文献
1)漢方処方応用の実務 山田光胤 南山堂
2)漢方診療のレッスン 花輪壽彦 金原書店
3)漢方処方解説 矢数道明 創元社
4)漢薬の臨床応用 神戸中医学研究会 医歯薬出版
5)中医処方解説 神戸中医学研究会 医歯薬出版
威徳 (剤型:エキス顆粒)
製品名(効能・効果)
威徳
(糖尿病、すい臓炎の炎症緩解)
構成生薬(松鶴堂加減)
山薬(サンヤク)
一位(イチイ)
猪苓(チョレイ)
沢瀉(タクシャ)
山梔子(サンシシ)
黒豆(クロマメ)
石膏(セッコウ)
知母(チモ)
甘草(カンゾウ)
人参(ニンジン)
粳米(コウベイ)
原処方(効能・効果)
白虎加人参湯
(原典:傷寒論・金匱要略)
のどの渇きとほてりあるもの(210処方適応症)
※石膏をのぞく生薬を水製エキスとし、それに石膏末を加えている。
処方解説
・威徳は、内熱をさます作用のある石膏・知母が生薬になっています。
・山薬は、糖尿に効果があり、滋養に富み、石膏を懸濁液として保存し、胃腸粘膜を保護するという働きがあります。
・人参は、全身の機能や消化吸収機能を亢める等、体力を補う作用があり、また、血糖降下作用があります。
・人参・知母・石膏の組み合わせによって、血糖降下作用が強められます。
(薬理実験の項参照)
・沢瀉・猪苓は、利尿に効があり、沢瀉は、血糖降下作用があります。
・山梔子には、消炎作用があります。
・一位、黒豆は、糖尿病に効果があります。また、黒豆には黒色色素アントシアニンの抗酸化作用、リポキシゲナーゼ抑制効果の作用があるといわれ、糖尿病との関連が考察されています。
使用目標
比較的体力がある人で下記のような症状がある方。
・口渇、多飲、多食、多汗などの症状がある。
・血糖値、Hb-A1cが高い。
・尿に、甘酸っぱいにおいがする。
(注)なお、症状が進んでいたり、体力が落ちている方は長命丸、八味地黄錠、またはその併用をお勧めいたします。
松鶴堂加減について
威徳は、白虎加人参湯の粳米を山薬に換え、一位、沢瀉、猪苓、山梔子、黒豆を加えたものです。
山薬は、もともと粳米に代用して使われていて、煎じ液中で石膏の沈殿を防ぎ、胃腸を保護する作用は同じですが、加えて、軽・中等度の糖尿病である“消渇”に効果があります。
沢瀉、猪苓には利尿作用があって体内の水分調節をし、沢瀉は、単品でも血糖降下作用が見られます。
一位、黒豆は、民間薬として、昔から糖尿病に効果があるとされています。
一口メモ
・インスリン依存型の糖尿病には、あまり効果は期待できません。
参考事項
1)ニンジン・チモ・セッコウの血糖降下作用
ニンジン・チモは、ともに各々単味で血糖降下作用があるが、ニンジン・チモを一緒に使用すると、逆に血糖降下作用が減少する。
しかし、さらにこの二味に、セッコウを加えると、血糖降下作用は増加する。
人参(単独で血糖降下作用がある)
知母( 〃 〃 )
↓
(併用で血糖降下作用減少) → 血糖降下作用が増加
↑
加 セッコウ
富山医薬大 木村正康先生による
1)白虎加人参湯とその構成生薬知母の唾液分泌促進作用
白虎加人参湯とその構成生薬知母の唾液分泌促進作用があり、これが口渇症状を改善。
「漢方と最新治療」 富山医科薬科大 陳福君、木村郁子、木村正康
1)黒豆
黒色色素アントシアニンの抗酸化作用、リポキシゲナーゼ抑制効果の作用があるといわれ、糖尿病との関連が考察されている。
使用上の注意
添付文書に記載の「使用上の注意」を併せて必ずご参照ください。
建林松鶴堂 「研究報告」
・威徳のラットにおける単回経口投与試験
(2004.1.30.ホクド・バイオサイエンスと共同研究)・・・社内報告
威徳の安全性を確認するためにラットにおける単回投与毒性試験を実施、その結果投与後14日までの一般状態および体重ならびに投与後14日の剖検において、威徳の投与による毒性変化は認められなかった。投与量は2g/sで実施した。
参考文献
1)漢方診療医典 大塚敬節・矢数道明・清水藤太郎 南山堂
2)漢方処方解説 矢数道明 創元社
3)漢薬の臨床応用 神戸中医学研究会 医歯薬出版
4)中薬大辞典 小学館
意発 (剤型:散)
製品名(効能・効果)
[意発]
動脈硬化、血圧降下、神経痛
構成生薬(松鶴堂加減)
よく苡仁末 木香末 決明子末 石葦末 当帰末 茯苓末 白朮末 沢瀉末 川きゅう末 芍薬末 紅花末丹参末 降香末
原処方(効能・効果)
[当帰芍薬散]
(原典:金匱要略)
比較的体力が乏しく、冷え症で貧血の傾向があり疲労しやすく、ときに下腹部痛、頭重、めまい、肩こり、耳鳴り、動悸などを訴える次の症状:月経不順、月経異常、月経痛、更年期障害、産前産後あるいは流産による障害(貧血、疲労倦怠、めまい、むくみ )、めまい、頭重、肩こり、腰痛、足腰の冷え性、しもやけ、むくみ、しみ (210処方適応症)
冠心U号方
(原典:中国医学科学院)
狭心症、冠不全、心筋梗塞の初期、脳血栓や脳梗塞の初期などで血おを呈するもの(『中医処方解説より』)
処方解説
・当帰・芍薬・川きゅう・白朮・沢瀉は、当帰芍薬散で、微小循環障害を改善する作用があります。このうち当帰・芍薬・川きゅうは、血行を良くし、白朮・茯苓・沢瀉は、脾を補いつつ体内にたまった余分な水分を外に出す作用があります。
・よく苡仁は、滋養、利尿、鎮痛の作用があります。
・木香は、気をめぐらせる作用があります。
・決明子は、緩下作用、血圧降下作用があります。
・石葦は、利尿作用があります。
・紅花は、駆お血剤で、また高血圧に効果があります。
使用目標
・どちらかというと、やや虚弱な人の高血圧、動脈硬化及びその随伴症状に。
・中高年の女性の高血圧に。
・水分代謝があまりよくない、例えば、足がむくむ、朝に手が握りにくい、顔が腫れぼったいことがあるという人の高血圧等に。
松鶴堂加減について
意発は、松鶴堂のオリジナル製剤ですが、構成生薬を見ると、当帰芍薬散と中成薬の冠心U号方を組み合わせたものの加減方になっています。
当帰芍薬散は、比較的虚弱で顔色が悪く、冷え症の人に使う代表的なお血の薬で、微小循環障害に効果があります。女性の高コレステロール血症・高脂血症は更年期の女性ホルモン減少と関連があるともいわれており、従って中高年の女性の軽症高血圧や腎性高血圧に効果が期待できるものといえます。
冠心U号方は、中国医学科学院が原典で、意発の製剤化以降にできたものですが、冠性心疾患のほか脳血栓の初期や一般的なお血にも用いられています。
決明子には、便通を整えるだけでなく、血圧降下作用があり、民間でもハブ茶として動脈硬化や高血圧によいとして飲まれています。
よく苡仁、石葦には利尿作用があり体内の水分調整をし、木香は気剤として木のめぐりを良くし、他薬を動かす効があります。
参考
<沢瀉について>
意発の成分の一つである「沢瀉」は水溶性と脂溶性の二つの分画を持つアリソールを含有し、水溶性の分画で利尿作用を現し、脂溶性の文画では、各種動物実験で、脂血症を清澄化し血中コレステロールの上昇を抑制し粥状腫を軽減させるなどの傾向を示し、高脂血症に効果があることが証明されています。
このため、沢瀉は、高脂血症等の目的で使う場合は、末で服用するほうがより効果が期待されます。意発が散剤である所以もここにあるのです。
一口メモ
・高血圧のひとに、往々お血の症状がみられます。
・お血は、ヘモレオジー(血液粘度)に関与しているので、高脂血症、高粘度血症の改善には駆お血剤が適応します。
使用上の注意
添付文書に記載の「使用上の注意」を併せて必ずご参照ください。
参考文献
1)漢方診療医典 大塚敬節・矢数道明・清水藤太郎 南山堂
2)漢方薬と民間薬 西山英雄 創元社
3)漢薬の臨床応用 神戸中医学研究会 医歯薬出版
4)中医処方解説 神戸中医学研究会 医歯薬出版
5)漢方処方解説 矢数道明 創元社
6)漢方診療のレッスン 花輪壽彦 金原出版
7)症候による漢方治療の実際 松田邦夫 創元社
8)臨床医のための漢方(基礎編) 松田邦夫・稲木一元 カレントテラピ
9)臨床医の漢方治療方針 長谷川弥人 大塚恭男 メジカルビュー
10)現代医療と漢方薬 医薬ジャーナル
加味根 (剤型:エキス剤)
品名(効能・効果)
加味根
感冒、発熱、悪寒、身体の疼痛、首・肩・項のこり
処方(松鶴堂加減)
細辛 蘇葉
葛根 麻黄 大棗 芍薬 生姜 麻黄 桂枝 甘草
原典(効能・効果)
葛根湯(原典:傷寒論、金匱要略)
感冒、鼻かぜ、頭痛、肩こり、筋肉痛、手や足の痛み(210処方適応)
処方解説
葛根は、強い解熱作用と軽度の発汗作用をもち、項背部の筋肉の緊張を緩解します。
麻黄・桂枝は、発汗・解熱に働きます。
麻黄は、咳嗽・呼吸困難を緩解します。
芍薬・大棗は、滋養強壮作用があり、甘草とともに筋肉のけいれんを緩解します。
生姜は、軽度の発汗作用があり、麻黄・桂枝・葛根を補助し消化吸収を助けます。
細辛は、発汗・鎮咳・鎮痛作用があります。
蘇葉は、解熱・鎮咳・鎮痛作用があり、また、芳香性健胃薬となります。
甘草は、諸薬の調和に働きます。
使用目標
・加味根は、葛根湯証を呈しているが、比較的胃腸が弱い人や胃腸不和を感じる場合に。
・比較的胃腸が弱い人の肩や首のこり。
松鶴堂加減について
加味根は、葛根湯に細辛、蘇葉を加えたものです。
したがって、葛根湯の「筋肉の過度の緊張を去り、血行を盛んにして発汗・解熱・利尿」する作用に加えて、細辛の頭痛を去り、痰飲の咳、鼻づまり等をとる作用、蘇葉の発汗・解熱作用、健胃作用と気を明るくする作用が加わって、葛根湯だが、比較的胃腸が弱い人、気うつ気味の人にも使えるようになっています。
言い換えれば、葛根湯だが、葛根湯が胃にさわるような人に使います。
一口メモ
風邪は万病の基といわれます。しかも年々悪化の傾向にありますから「風邪かな?」と思ったら、すぐにご自分の証にあった薬を服用して大事をとってください。3、4日たってまだ風邪が抜けないときは、他の薬に変更したほうがいいことがありますので、ご相談ください。
使用上の注意
添付文書に記載の「使用上の注意」を併せて必ずご参照ください。
参考文献
1)漢方診療医典 大塚敬節・矢数道明・清水藤太郎 南山堂
2)漢薬の臨床応用 神戸中医学研究会 医歯薬出版
3)中医処方解説 神戸中医学研究会 医歯薬出版
精禍 (剤型:散)
製品名(効能・効果)
[精禍]
腰部、腰痛、筋肉痙攣
構成生薬(松鶴堂加減)
人参末 芍薬末
桂皮末 当帰末 牛膝末 甘草末 杜仲末 地黄末 秦ぎょう末 川きゅう末
茯苓 防風 土茯苓
原処方(効能・効果9
[養血湯]
(原典:万病回春)
腰痛眼痛筋骨疼痛を治す
(「万病回春」巻五より)
処方解説
四物湯(当帰・川きゅう・芍薬・地黄)は、血行を良くし、補血作用があります。
杜仲・牛膝は、特に下肢の筋肉・骨を強くする作用があります。
桂皮・当帰・川きゅうは、血行を良くして体を温め、寒による痛みをとります。
秦ぎょうは、鎮痛・消炎効果があります。
人参は、脾胃を良くし体力をつけます。
甘草は、諸薬の調和をはかります。
使用目標
・腰痛のファーストチョイス
・ぎっくり腰
・中年以降の慢性腰痛
・寒・湿によってでた腰以下の筋肉痛、運動障害、しびれなど。
松鶴堂加減について
精禍は、養血湯から茯苓・防風・土茯苓を除き、人参・芍薬を加えたものです。
芍薬を加えて当帰、川きゅう、地黄で四物湯とし、桂皮も協力して血行を良くして、寒による疼痛・しびれを改善し、牛膝、杜仲、秦ぎょうが鎮痛、鎮痙に働くというもので、これに人参を加えて脾胃の働きを助けるよう工夫したものです。
体の老化(腎虚)があって、風・寒・湿の影響を受けて出た諸症状(とくに腰より下)に、効果があります。
一口メモ
日本は湿度が高いので、湿による疾病・・・神経痛・リウマチ等が多く発生します。
また、そういった素質の上に、さらに急激に風・寒・湿にあったり、労働による疲労により、腰痛、ギックリ腰、筋肉痛などが起きやすくなります。冷えには充分気をつけましょう。
使用上の注意
添付文書に記載の「使用上の注意」を併せて必ずご参照ください。
参考文献
1)万病回春
2)漢薬の臨床応用 神戸中医学研究会 医歯薬出版
光明 (剤型:エキス顆粒)
品名(効能・効果)
[光明]
お血、内出血、打撲傷、足腰疼痛・痙攣・麻痺、水腫、婦人白帯下、月経不順、生理痛、めまい、嘔吐、足腰の冷え性、更年期障害
処方(松鶴堂加減)
沢瀉(タクシャ) ◎木通(モクツウ) 人参(ニンジン) ◎桃仁(トウニン) ◎車前子(シャゼンシ) (注):◎の3生薬は衆方規矩に加方の記載がある。
茯苓(ブクリョウ) 蒼朮(ソウジュツ) 陳皮(チンピ) 半夏(ハンゲ) 当帰(トウキ) 芍薬(シャクヤク) 川きゅう(センキュウ) 桔梗(キキョウ) 生姜(ショウキョウ) 桂皮(ケイヒ) 麻黄(マオウ) 甘草(カンゾウ) 香附子(コウブシ)
厚朴(コウボク) 白し(ビャクシ) 枳穀(キコク) 大棗(タイソウ)
原典:(効能・効果)
[五積散]
(原典:和剤局方)
慢性に経過し、症状の激しくない次の諸症:胃腸炎、腰痛、神経痛、関節痛、月経痛、頭痛、冷え症、更年期障害、感冒 (210処方適応症)
処方解説
・蒼朮・半夏・茯苓・陳皮・甘草・人参は、消化機能を高め、胃内停水を取ります。
・当帰・川きゅう・芍薬は、血行を良くし、貧血を補います。
・香附子・桃仁は、滞った血行をめぐらせます。
・桂皮・生姜・麻黄・桔梗は、寒冷を暖め、血行を良くします。
・沢瀉・茯苓・木通・車前子は、体内の余分な水分を去り、冷え・痛みを除きます。
使用目標
・冷え性・冷えて痛む諸症(神経痛・関節痛・腰痛等)
・新旧の打撲傷
・流産、または産後、体調が思わしくない人
・月経痛やおりもので困っている人
・冷房がこたえる人
・老人や冷え性の人の風邪
松鶴堂加減について
・光明は、五積散から厚朴・白しを去り、体内の水分貯留を調節する沢瀉・木通・車前子を加え、枳穀・大棗を去って、脾胃を強め体力を補う人参と換え、駆お血作用の強い桃仁を加えたものです。
上記の加減によって、原方の五積散よりさらに新陳代謝の衰えた虚証で、症状が深刻なものにも使えます。
一口メモ
・冷え性で新陳代謝の衰えている人の諸症状に効果があります。
参考事項
・原方の五積散は、気・血・痰・寒・食の五積を治すというところから名付けられたもので、やや虚証で貧血気味の人が、風・寒冷・湿気・水毒によって引き起こされた諸症に使うものです。体質的に肝と脾の虚弱なものが、寒と湿に損傷されて怒起こる諸病( 胃腸炎、腰痛、リウマチ、月経痛、冷え等)に用いられます。
五積散は薬物構成が複雑になっているので、常に処方通りに使うのではなく、当面の症状に応じて加減して使うと良い処方といわれています。
光明の加減の中にもある木通・車前子・桃仁の加方は、「衆方規矩」(曲直瀬道三)、「牛山方考」(香月牛山)に記載があります。
「寒湿に感じて腰痛脾胃の気とづるには桃仁を加う。」
「婦人の淋病には車前子、木通を加う。」 (以上 「衆方規矩」 より)
使用上の注意
添付文書に記載の「使用上の注意」を併せて必ずご参照ください。
参考文献
1)漢方診療医典 大塚敬節・矢数道明・清水藤太郎 南山堂
2)漢方処方解説 矢数道明 創元社
3)漢薬の臨床応用 神戸中医学研究会 医歯薬出版
4)中医処方解説 神戸中医学研究会 医歯薬出版
春香 (剤型:エキス顆粒)
製品名(効能・効果)
[春香]
ニキビ、吹き出物 上焦の瘡腫
構成生薬(松鶴堂加減)
オケラ(朮) 沢瀉
黄連 薄荷 枳実 甘草 山梔子 川きゅう 黄ごん 連翹 白し 桔梗 防風
荊芥
原処方(効能・効果)
[清上防風湯]
(原典:万病回春)
にきび
(210処方適応症)
処方解説
・黄連、黄ごん、山梔子、連翹は、強い消炎作用があり、炎症・化膿を鎮めます。
・防風、薄荷は、皮疹の発散・消退を促進します。
・白し、桔梗、川きゅうは、解毒、俳膿作用があり、また他薬の薬効を上部に引き上げます。
・枳実は、清熱作用のある生薬と用いて排膿を促進します。
・オケラは、薄荷、枳実とともに消化機能を促進し、利尿で解毒を補助します。
・沢瀉は、利尿作用によって排泄解毒します。
使用目標
・思春期の男女のニキビで、赤くなって化膿するもの。
・体力がある人の頭部の化膿性腫れ物、湿疹。
・実証タイプの人のニキビ、吹き出物。
(注)・女性で、お血症状(のぼせ、生理不順、冷え・・等)がある人には恵賜。
・小児、高齢者のできものには、治頭瘡一方。
・胃腸障害を伴う吹き出物には、鶴寿。
松鶴堂加減について
春香は、清上防風湯から荊芥を去り、オケラ、沢瀉を加えた処方で、上焦の風熱、つまり、身体上部の炎症、特に化膿性炎症に効果があります。
皮膚疾患では、発散と吸収排泄によって炎症を改善しますが、発散が過ぎると化膿を促進して症状を悪化させたような状態になるので、春香では荊芥を去り、内側から吸収排泄するかたちを強めてオケラ、沢瀉を加えてあります。
こんな時に
・春香を服用して数日後に、人によっては、発散作用により悪化したようにみえる症状をだすことがあります。
上記のような症状が出た場合は、副作用との判別が難しいので、一旦服用を中止して医師または薬剤師にご相談ください。
使用上の注意
添付文書に記載の「使用上の注意」を併せて必ずご参照ください。
参考文献
1)漢方診療医典 大塚敬節・矢数道明・清水藤太郎 南山堂
2)漢方後世要方解説 矢数道明 医道の日本社
3)中医処方解説 神戸中医学研究会 医歯薬出版
4)漢薬の臨床応用 神戸中医学研究会 医歯薬出版
5)汎用生薬便覧 日本大衆薬工業協会
心龍
品名(適応症)
[心龍]
神経痛、リューマチ、関節炎、坐骨神経痛
松鶴堂漢方
当帰 芍薬 地黄 防已 茯苓 白朮 白し 人参 沢瀉 よく苡仁
桃仁 竜胆 威霊仙 生姜 陳皮 甘草 桂皮 黄柏
牛膝 川きゅう きょう活 防風
原典
[疎経活血湯]
(万病回春)
関節痛、神経痛、腰痛、筋肉痛
(210処方適応症)
処方解説
◇当帰・芍薬・地黄・桃仁⇒四物湯の川きゅうを除いて胃の弱い人に配慮し、桃仁を加味することでお血を去り、血液の循環を良くします
◇防已・ 茯苓・白朮・沢瀉・よく苡仁⇒体内の水毒を利尿や発散で追い出します
◇人参⇒滋養のみならず胃腸の働きを調え、体を温めます
◇陳皮・桂皮・生姜⇒発汗をし新陳代謝を促します
◇威霊仙・白し・芍薬・甘草⇒鎮痛作用
◇竜胆・黄柏⇒下半身の湿熱を除き・尿酸を中和します
使用目標
・虚血性体質の人で、血圧はどちらかといえば低めの人(痛みが昼より夜の方が強くなる人)
・お血体質の人(手術や中絶・交通事故経験がある)
・腰から内股にかけて走る様に痛む坐骨神経痛に良い
・体を冷やしやすい漁業・田んぼ・地下で働く人
・日ごろから酒色に溺れ不摂生している人
・虚弱者や過労ぎみの人
松鶴堂加減
「心龍」は中国の明時代(約400年前)の万病回春・痛風門のある疎経活血湯を原典とし加:人参・沢瀉・よく苡仁 黄柏・桂皮で、減:川きゅう・牛膝・防風・きょう活としたものです。
疎経活血湯の名前の由来は血液・体液の流れを良くし(疎経)、血液を活性化する(活血)という意味で、筋脈中に滞ったお血を取り除き、きれいな血液を巡らし、風・寒・湿を取り除いて痛みを治していく方剤です。
原点には『全身に痛みが走り、体のあちこちで刺すように痛み、左の足が一番痛むものを治す。左は血に属しているからである。病因の多くは酒色に溺れたり不摂生により、筋肉や血管の活力を衰えさせている所へ、体を冷やしたり暴飲暴食により風・寒・湿の病的素因を生じせしめ、熱と寒が入り混じり、筋脈を傷つけて痛みを発するのである。これは血に属するので昼は軽く、夜は重くなる。宜しく血液・体液の流れを良くし、お血・水毒を取り去るべきだ』とあります。
また、「心龍」は四物湯をベースに人参・白朮・陳皮で胃腸の働きを調え、気虚を益し、沢瀉を始め多くの利尿剤で湿を除き、桂枝茯苓丸の意をくむ配合でお血を取り去るという方剤です。衆方規矩に『上半身やひじの痛みには桂枝を加える』『下半身の痛みには黄柏・よく苡仁・(木瓜・木通)を加える』とあるところからこれらを加えることにより痛みを治す作用が高まって、寒冷に当たったり、疲労が重なったり、酒の飲みすぎ等によって起こる体中の痛み・神経痛・坐骨神経痛・腰痛・リューマチ・しびれ等に良い薬です。
参考事項
≪養生法≫
○食事について
1)体が温まるものを、栄養バランス良く摂る
2)水分の摂りすぎに気をつける
3)貧血を改善する
4)タバコ・アルコール・香辛料は控える
○日常生活について
a)体をひやさない(冷房・朝夕の冷え)
b)適度な運動(散歩など)は体も温まり、血液循環も良くなる上、ストレス発散になる
c)湿気に気をつける(換気、ふとんの日干し、雨の日の外出)
d)ストレスを上手に解消し、充分な睡眠をとる
使用上の注意
添付文書に記載の「使用上の注意」を併せて必ずご参照ください。
参考文献
漢方212方の使い方;埴岡 博・滝野 行亮共著
衆方規矩;曲直瀬 道三著
常楽 (剤型:エキス顆粒)
品名(効能・効果)
常楽
冷え性、しもやけ
処方(松鶴堂加減)
当帰 甘草 沢瀉 人参 桂皮 大棗 芍薬 呉茱萸 細辛 生姜 木通
原典(効能・効果)
当帰四逆加呉茱萸生姜湯
(原典:傷寒論)
手足の冷えを感じ、下肢が冷えると下肢または下腹部が痛くなり易いものの次の諸症;しもやけ、頭痛、下腹部痛、腰痛(210処方 適応症)
処方解説
・当帰、桂皮、細辛は、血行促進作用を強めて、冷えによる痛みを解消します。
・芍薬、大棗、甘草は、筋肉の緊張を緩めて腹痛、腹満、腰痛などを治します。
・呉茱萸は、血行を良くして手足の冷えを解消するとともに、水毒による頭痛、嘔吐を取ります。
・生姜は、内臓を温め健胃、鎮嘔に働きます。
・沢瀉は、利尿作用で、体内の水分を調節します。
・人参は、滋養強壮作用があり、体力を補います。
使用目標
・冷え症で、夏もくつしたをはいていたいという人。
・寒冷に敏感で、寒さで頭痛を起こしたりする人。
・寒冷によって憎悪する種々の痛み・・・下腹部痛、腰痛、月経痛など。
・しもやけができやすい。
松鶴堂加減について
常楽は、当帰四逆加呉茱萸生姜湯から、木通を去って沢瀉・人参を加えたものです。
当帰四逆加呉茱萸生姜湯は、「久寒」(寒冷で憎悪する腹痛があって、抵抗と圧痛があるもの)に用いる薬方で、冷え症で、寒冷刺激によって体表の血行が悪くなってしもやけができたり、下肢・下腹部・腰・背・頭に痛みが出る人、また腹部手術後の癒着による痛みに使います。症状が激しくなると、嘔吐、下痢を起こすことがあります。
これらの症状は、慢性化していることが多く、長期的に服用することがあるので、同じ利尿作用でも苦寒性の強い木通を沢瀉に換え、脾胃を補って滋養強壮作用のある人参を加えて、幅広く虚証のひとに使え、長期にも使えるように工夫されています。
一口メモ
・現代社会では冷暖房が発達しているので、はっきりした冷えの痛みがでにくく、体調がすぐれない、いわゆる「不定愁訴」となることがありますが、寒冷に敏感に反応します。
使用上の注意
添付文書に記載の「使用」を併せて必ずご参照ください。
参考事項
参考文献
1)漢方診療のレッスン 花輪壽彦 金原出版
2)漢方処方解説 矢数道明 創元社
3)漢方方意ノート 千葉古方漢方研究会 丸善
4)中医処方解説 神戸中医学研究会 医歯薬出版
5)漢薬の臨床応用 神戸中医学研究会 医歯薬出版
長命丸 (剤型;丸剤)
製品名(効能・効果)
長命丸
欠食悪く疲れ易いもの又は手足が冷えるものの次の諸症:下肢の痛み、腰痛、尿量の減少又は頻尿
構成生薬(松鶴堂加減)
地黄末 牡丹皮末 山茱萸末 桂皮末 山薬末 乾姜末 沢瀉末 牛膝末 茯苓末 車前子末
注1)肉従容末 注2)沈香末
注1)千金方に肉従容加方の記載
注2)張氏医通に「八味丸に沈香を加」の記載
原処方(効能・効果)
牛車腎気丸
(原典:済生方)
疲れやすくて、四肢が冷えやすく尿量減少または多尿で時に口渇がある次の諸症:下肢痛、腰痛、しびれ、老人のかすみ目、かゆみ、排尿困難、頻尿、むくみ(210処方適応症)
処方解説
・地黄、山茱萸、山薬は、いずれも補剤で強壮・滋潤の効があります。
・茯苓・沢瀉・牛膝・車前子は、利尿作用があり、停滞する水分を取り除きます。
・牡丹皮は、血のうっ滞を散じ鎮痛の効があります。
・桂枝・乾姜は、沈衰した諸機能の働きを活発にします。
・山薬、沢瀉は血糖を整える作用があります。
・山茱萸、沢瀉、牡丹皮は、血圧を整える作用があります。
・肉従容は、強壮・強精剤で腰や脚の冷え痛みなどに効果があり、気虚の便秘に沈香と組んで効があります。
・沈香は、理気作用により、胃腸機能を助けます。
使用目標
・八味地黄錠の適応者で、症状が激しい(腰痛が激しい、下半身のむくみ、尿不利が顕著など)人。
・高齢者に応用する機会が多い処方です。
こんな時は
・本方を服用して食欲減退など胃腸症状に不快を覚えるときは、食後に服用するか、服用量を減らして服用してください。
松鶴堂加減について
本方は、牛車腎気丸に、肉従容と沈香を加味したものです。
牛車腎気丸は、八味地黄丸に牛膝、車前子を加えたもので、八味地黄丸証の症状がより顕著・重症なものに使います。八味地黄丸は、疲れやすく、手足の冷えのある人で腰痛や尿量の異常などいわゆる腎虚によって起きた諸症状を治す方剤です。ここに
肉従容を加味して強壮作用を強め、沈香の健胃作用によって地黄などで出やすい胃腸の不調を抑えるよう工夫されています。
使用上の注意
添付文書に記載の「使用上の注意」を併せて必ずご参照ください。
参考文献
1)漢方診療医典 大塚敬節・矢数道明・清水籐太郎 南山堂
2)漢方処方解説 矢数道明 創元社
3)漢薬の臨床応用 神戸中医学研究会 医歯薬出版
4)中医処方解説 神戸中医学研究会 医歯薬出版
5)汎用生薬便覧 日本大衆薬工業協会
鼻療 (剤型;顆粒)
品名(効能・効果)
鼻療(顆粒)
アレルギー性鼻炎、鼻つまり、鼻水、鼻よりくる頭痛、鼻腔炎、蓄膿症、脾厚生鼻炎
処方(松鶴堂加減)
白朮 生姜 山椒 きょう活 人参 黄耆 オケラ 葛根 大棗 独活 甘草 升麻 白し 麻黄 防風
原典(効能・効果)
麗沢通気湯
(原典:蘭室秘蔵)
鼻に香臭を聞かざるものを治す。(『衆方規矩』より)
処方解説
・防風・独活・白し・オケラは、体表の余分な水分を除き、炎症をおさめます。
・白しは、副鼻腔炎による頭部の痛みをとり、鼻閉を改善します。
・黄耆は、体表を整え引き締めます。
・人参・白朮・生姜・山椒・大棗は、胃腸機能を整えます。
使用目標
・証を問わず、慢性の鼻の各種疾患に。
蓄膿症、鼻つまり、鼻茸等
・アレルギー性鼻炎の花粉症や、その予防に。
松鶴堂加減について
鼻療は、麗沢通気湯からきょう活、葛根、甘草、麻黄を去って、白朮、人参を加えた製剤です。これは強力な解熱作用のある麻黄、葛根を除き、脾胃を補う人参、白朮を入れることで長期に服用することが出来るようにしたものです。
参考事項
・花粉症(アレルギー性鼻炎)を目的に服用する場合は、体質改善が主体となるため長期服用になることが多くなります。
・軽い花粉症(アレルギー性鼻炎)では、シーズンの1ヶ月くらい前から服用して花粉症が発症するのを予防します。
使用上の注意
添付文書に記載の「使用上の注意」を併せて必ずご参照ください。
参考文献
1)漢方概論 藤平建・小倉重成 創元社
2)衆方規矩 曲直瀬道山著・池尻勝編 燎原
3)汎用生薬便覧 日本大衆薬工業協会
扁鵲 (剤型;散)
品名(適応症)
扁鵲
脂肪過多症
松鶴堂漢方
牡丹皮末、半夏末 桂皮末 甘草末 橘皮 芍薬末 柴胡末 茯苓 大黄末 猪苓末 沢瀉末 生姜末 升麻末
原典(適応症)
九味半夏湯(石崎朴庵・飲病論)
消化吸収がよくブヨブヨと太るタイプ、脳卒中の前触れのような症状のあるもの。過食による肥満を基盤にした糖尿病、循環器、脳血管障害に適応される。
(「漢方診療のレッスン」より)
処方解説
・沢瀉・猪苓・半夏・生姜は、体内組織に停滞した水毒を取り除き、胃内停水を除いて水分代謝を改善します。
・牡丹皮・芍薬は、血液循環を促進して同時に血液中にある脂質を取り除きます。
・桂皮は、体を温め血行を良くして牡丹皮・芍薬の働きを助けます。
・柴胡・升麻は、気を持ち上げる作用があり、他の生薬の働きを引き上げます。
・大黄は、通じをつけて体内の余分な体毒の排出をはかります。
・甘草は、諸生薬の調和をはかります。
使用目標
・皮下脂肪型肥満から内臓脂肪型肥満まで
・中性脂肪やコレステロール値が気になる
・中年太りのタイプで身体が重く感じる人
・おなか周りがだぶだぶしている人
・「アンコ型」の肥満で脳卒中が心配な人
・中年から肥満になった女性
構成生薬の薬性・薬味・薬効
生薬 味 性 薬効
沢瀉 甘 寒 利尿、コレステロール降下、血糖・血圧の降下、抗脂肪肝作用
桂皮 辛・甘 温 血液循環を促進し、発汗と利尿の作用を強めて局所の体液停滞を軽減する
柴胡 苦 微寒 鎮静・鎮痛、気を升提する。
大黄 苦 寒 瀉下作用
芍薬 苦 微寒 駆お血薬
半夏 辛 温 嘔吐、痰飲に。
生姜 辛 微温 発汗解表、健胃。
升麻 甘・辛 微寒 解表・透疹。中気を升提する。
甘草 甘 平 薬性を調和する。
猪苓 甘・淡 平 利尿(清熱作用がある)
牡丹皮 苦・辛 微寒 駆お血薬
松鶴堂加減について
扁鵲は石崎朴庵の九味半夏湯から、茯苓・橘皮を去って、桂皮・芍薬・牡丹皮・大黄を加味したものです。
九味半夏湯は、留飲による悪太りとその延長の中風等につかわれるものですが、津田玄仙は「手温き薬なれば種々加減すべし」と言っていて、症状によって加減して使うことを推奨しています。
これを受けて、扁鵲は、現代の肥満は過食、特に動物性脂肪・蛋白の摂りすぎで、中性脂肪・コレステロールが高くなっていることから、芍薬・牡丹皮をくわえて駆お血効果により、血液循環を良くして水毒、お血、血液中に存在する脂質を取り除くよう工夫し ています。桂皮はその運行を助け、大黄は排泄を通して余分なものを体外に出していきます。
一口メモ
・扁鵲を服用後、咽喉がイガイガする人は生姜類をとるとイガイガが治ります。
・服用の時刻も、コレステロールが増える時間帯の午後0時〜午後2時の服用を、特に忘れないようにしたいものです。
<扁鵲と、意発(エキス顆粒)・松鶴鶴姿(エキス顆粒)との使い分け>
(防風通聖散)・(防已黄蓍湯)
意発(エキス顆粒)も、松鶴鶴姿(エキス顆粒)も、扁鵲と同じように、肥満症に使いますが、証にしたがって、使い分けます。
意発(エキス顆粒)は、実証で、体力気力とも充実し、よく食べよく飲む生活をしていて、特に食毒をため込んで、体格的にはお臍を中心に太ったいわゆる太鼓腹を呈している人に使います。したがって、攻撃的な生薬(瀉剤・・大黄、芒硝、麻黄、石膏等)を多 く使って、積極的に蓄積物を外に出そうとするものです。
松鶴鶴姿(エキス顆粒)は、肥満しているが、体力があまりなく疲れ易く、皮膚にもしまりがなくやわらかくて、汗をかきやすい、下肢がむくむといった水毒症状のつよい人に使います。皮膚をひきしめ余分な水分を取り去る作用があります。
扁鵲は、上記の2製剤の中間の肥満、脂肪と水太りの混合した肥満に使います。肥満のタイプとしては一番多くみられるタイプで、例えば、年齢と共に太ってきて、中性脂肪、コレステロールも上がってきているという人に使います。扁鵲は、積極的に利水す る沢瀉、猪苓が体内に貯まった水分を体外に排出し、牡丹皮、芍薬が滞った血液を循環させて血液中の脂肪分を排出するという働きをして脂肪過多を解消していきます。
実証・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・中間・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・虚証
体力気力ともに充実 疲れ易く体力がない
脂肪+水のミックス型肥満
扁鵲
↓
脂肪太り 水太り
意発(エキス顆粒)→ ←松鶴鶴姿(エキス顆粒)
(防風通聖散) (防已黄蓍湯)
・自家中毒物質を取り去る。 ・水分代謝・血液循環(脂肪)を ・体力を補って体表を引き締めて
整える(新陳代謝の正常化) 水を除く
―(注)以上は漢方医学による解釈―
建林松鶴堂 「社内研究報告」
・扁鵲のラットにおける単回経口投与試験
(1995.8.7 臨床医科学研究所と共同研究)
最新の医学・薬学の進展に対応した水準の高い安全試験であるGLPに基づき、ラットを用いた単回経口投与毒性試験では異常はまったく認められなかった。
・成人37名に対する扁鵲治験
(2003.10〜2004.5. 慈恵医科大健康医学センターによる測定・・2004.8.現在未発表)
扁鵲服用前後における、BMI、臍部CT検査、腹腔内脂肪面積、中性脂肪を測定、肥満者の肥満度、体脂肪率、高中性脂肪血症者の中性脂肪、腹部脂肪面積を有意に低下させる結果が出ており、発表予定の段階となっている。
参考文献
1)漢方診療のレッスン 花輪壽彦 金原出版
2)漢方処方解説 矢数道明 創元社
3)難波恒夫:和漢薬百科図鑑
4)田村康二:時間診療学
豊心 (剤型:散)脂
製品名(効能・効果)
[豊心]
歯齦炎、口内炎、食欲不振
構成生薬(松鶴堂加減)
◎桔梗末 ◎防風末 防已末 沢瀉末 ◎桃仁末 ◎升麻末
黄蓍 人参末 白朮末 茯苓末 当帰末 大棗末
桂枝 川きゅう末 地黄末 芍薬末 甘草末 生姜末
(注) ◎の4生薬は「衆方規矩」記載の八珍湯に加法の記載がある。
原処方(効能・効果)
[十全大補湯]
(原典:和剤局方)
病後の体力低下、疲労倦怠、食欲不振、ねあせ、手足の冷え貧血
(210処方適応症)
[八珍湯]
(原典 正体類要)
肝脾傷損し血気虚弱にして悪寒発熱し、或は煩燥して渇をなし、或は寒熱し昏慣し、或は胸膈利せず大便実せず、或は飲食を思うこと少なく、小腹脹痛し、或は口舌に瘡を生じ、或は歯齦腫痛し、或は便血吐血し盗汗自汗するなどを治す。
(「衆方規矩」より)
また、清熱補気湯の加減方ともとれます。
[豊心] → 桔梗、沢瀉、地黄、防風、桃仁、大棗、防已、川きゅう、生姜、升麻、白朮、当帰、甘草、人参、茯苓、芍薬
[清熱補気湯] 胃の虚熱によっておきた口内炎、舌のあれ、痛み等に。 → 升麻、白朮、当帰、甘草、人参、茯苓、芍薬、麦門冬、玄参、五味子
処方解説
・人参、白朮、茯苓、甘草、大棗、生姜は、四君子湯として胃腸機能を活発にします。
・人参は、諸臓器の機能を活発にします。
・白朮・茯苓は、胃内の停滞した水分を取り除き、胃の機能を活発にします。
・当帰、川きゅう、芍薬、地黄は、四物湯で、血行を良くして、“血虚”を改善します。
・桔梗は、俳膿作用があると共に、他薬の薬効を上に引き上げる作用があります。
・防風は、解熱、鎮痛の効があります。
・防已は、消炎、利水、鎮痛の効があります。
・沢瀉は、利尿、鎮痛の効があります。
・桃仁は、消炎性駆お血剤で、鎮痛、解毒の効があります。
・升麻は、解熱、鎮痛、解毒があり、瘡腫に効果があります。特に頭面部の疼痛に効果があり、さらに諸薬を上に引き上げる作用があります。
使用目標
疲れやすい、体力がない、顔色が悪いといった(気血両虚)人の次のような症状に。
・歯茎が腫れている。
・口内炎を起こしている。
・舌があれている。
松鶴堂加減について
豊心は、八珍湯(四君子湯合四物湯)に、または十全大補湯から黄蓍、桂皮を去ったものに、桔梗、防風、防已、沢瀉、桃仁、升麻を加えたもので、原方に比べ、消炎、俳膿、鎮痛、利水の作用が強められています。桔梗、防風、桃仁、升麻の加法は「衆方規矩」の八珍湯の部に記載があります。
また、清熱補気湯の加減法ともとる事ができます。
いずれも原方は、胃腸(脾胃)が虚して、そのために口腔内があれたり、口内炎を起こしたり、歯茎が腫れたりしている場合に使われている処方で、豊心ではさらに解熱・消炎・排膿のある生薬が加えられています。
一口メモ
・服用時、次のような所作をするとより効果的です。
しばらく口の中にふくんでいる。
口の中でうがいのようにブクブクする。
歯茎の腫れには、指につけて歯茎を軽くマッサージする。
参考事項
・体力が充実した肥満型の人の歯齦炎、口内炎については、他の製剤(防風通聖散、桃核承気湯等)のほうが良いことがあります。
使用上の注意
添付文書に記載の「使用上の注意」を併せて必ずご参照ください。
参考文献
1)漢方診療医典 大塚敬節・矢数道明・清水籐太郎 南山堂
2)漢方後世要方解説 矢数道明 医道の日本社
3)衆方規矩 池尻勝 編 燎原
4)漢薬の臨床応用 神戸中医学研究会 医歯薬出版
凌雲 (剤型:散)
製品名(効能・効果)
[凌雲]
湿疹、くさ、頭瘡、がんがさ(注)
構成生薬(松鶴堂加減)
猪苓末 かっ香末
当帰末 芍薬末 川きゅう末 山梔子末 連翹末 薄荷葉末 生姜末 荊芥末 防風末 麻黄末 大黄末 硫酸ナトリウム 白朮末 桔梗末 黄ごん末 石膏 滑石
甘草末
原処方(効能・効果)
[防風通聖散]
(原典:宣明論中風門)
腹部に皮下脂肪が多く、便秘がちなものの次の諸症:高血圧の随伴症状(どうき、肩こり、のぼせ)肥満症、むくみ、便秘
(210処方適応症)
(注)・くさ:瘡、かさ・・・皮膚にできる湿疹、赤ん坊の頭や顔にできる皮膚病。
・がんがさ:雁瘡・・・湿疹、痒疹などの皮膚病。四肢、特に足に多くでき痒い。
処方解説
・防風、麻黄は、皮膚(表)を開いて発汗作用で排泄を図ります。
・薄荷、荊芥は、頭部の熱を消炎作用によってとります。
・大黄、芒硝は、胃腸内の食毒を排泄します。
・滑石、白朮、猪苓は、利水作用により水毒を除きます。
・桔梗は、消炎、俳膿作用があり、また諸薬の薬効を上部に持っていく作用があります。
・山梔子、黄ごん、連翹、石膏には、強い消炎作用があり化膿、炎症を鎮めます。
・当帰、川きゅう、芍薬は、血行調節をします。
・当帰、川きゅうには、発汗、瀉下、利水によって体液の喪失が過度になることを防止する作用があります。
・かっ香、白朮は、消化吸収の働きがあります。
使用目標
・頭部にできた吹き出物。
・頭頂部、項、背中(陽部位)から始まった皮膚疾患。
・がんこな湿疹、脂漏性湿疹。
松鶴堂加減について
凌雲は、防風通聖散の加減方で、甘草を去り、猪苓・かっ香を加えたものです。
防風通聖散は、食による老廃物(食毒)、液状老廃物(水毒)、風毒などの毒素が体内に貯まって実熱となって引き起こされる種々の疾病につかわれます。ことに皮膚疾患では、食べすぎ、便秘等でにきび、吹き出物が憎悪するのはよく知られていますが、体内に種々の老廃物をため込んでいる人に著明です。
凌雲では、防風通聖散の持っている「三焦(上中下)表裏の自家中毒物を、発汗、利尿、俳便によって排泄し、解毒する」という働きに、さらに、猪苓を加えて水毒の排泄を強め、かっ香を加えて消化器官の働きを助けるよう工夫してあります。
一口メモ
・便秘を解消すると、皮膚疾患が好転します。
・アルコール類、刺激性飲食物は控えてください。
こんな時は
・凌雲は、湿疹の原因となっているものを皮膚から発散させて治癒させるという作用があるので、服用後数日の間に、ときに湿疹等が悪化したかのような状態になることがあります。
たいていは、発散して徐々に治まるものですが、念のため服用を中止して、かかりつけの医師または薬剤師にご相談ください。
(アトピー性皮膚炎の場合、治まらないことがあります。)
ご注意ください
・体力の衰えている人には使わないでください。
・普段から軟便気味の方では、下痢することがあります。
使用上の注意
添付文書に記載の「使用上の注意」を併せて必ずご参照ください。
参考文献
1)漢方診療医典 大塚敬節・矢数道明・清水籐太郎 南山堂
2)漢方後世要方解説 矢数道明 医道の日本社
3)漢方処方解説 矢数道明 創元社
4)漢方一貫堂医学 矢数格 医道の日本社
5)漢薬の臨床応用 神戸中医学研究会 医歯薬出版
6)中医処方解説 神戸中医学研究会 医歯薬出版
加味葛根湯 (剤型:煎じ薬)
品名(効能・効果)
[加味葛根湯]
発汗解熱、身体の疼痛
処方(松鶴堂加減)
葛根 麻黄 大棗 桂枝 芍薬
甘草 生姜
香附子 蘇葉 陳皮
原典(効能・効果)
[葛根湯]
(原典:傷寒論・金匱要略)
感冒、鼻かぜ、頭痛、肩こり、筋肉痛、手や肩の痛み
(210処方適応症)
[香蘇散]
(原典:和剤局方)
胃腸虚弱で神経質の人の風邪の初期
(210処方適応症)
処方解説
・葛根は、解熱、発汗作用があり、筋攣宿を緩解します。
・麻黄、桂枝は、組んで発汗、解熱に働きます。
・芍薬は、葛根・甘草とともに血をめぐらし筋肉の緊張・痛みを和らげます。
・蘇葉は、鎮静・発汗作用があり、皮ふ表面から邪気を発散します。
・香附子は、気のうっ滞を疎通する作用があります。
・陳皮は、気の滞りを疎通発散して、気をめぐらせるとともに健胃・利尿作用があります。
・生姜は、体表の気をめぐらせ、また健胃作用があります。
・甘草は、諸薬の調和を図ります。
使用目標
・普段から胃腸があまり丈夫でない人が、風邪をひいた時。
・風邪をひいて、胃腸障害を起こしやすい人。
・気が沈みがちで、ストレスを被りやすい人のかぜ。
松鶴堂加減について
加味葛根湯は、葛根湯だけでは胃腸にさわるというような人を考慮して、健胃作用のある香蘇散を合方したものです。
気が沈みがちな人、葛根湯など麻黄が入った漢方薬で胃腸を損ないやすい人の風邪のひきはじめで熱があり悪寒がして、後背部(肩や背・うなじ)にこわばりや痛みがあるような時、あるいは胃腸型のかぜなどに使います。
一口メモ
・風邪はどのような風邪でも、早めに症状にあったものを服用するのが早く治すコツです。
・身体をあたためる生姜湯、卵酒も風邪に効果があります。
使用上の注意
添付文書に記載の「使用上の注意」を併せて必ずご参照ください。
参考文献
1)漢方診療医典 大塚敬節・矢数道明・清水籐太郎 南山堂
2)漢方処方解説 矢数道明 創元社
3)中医処方解説 神戸中医学研究会 医歯薬出版
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