シミ・ソバカスに対する漢方治療

 シミ・ソバカスの原因には、日焼けによるものや加齢によるものなどがありますが、特に女性ホルモンや血流の停滞が関連した若い人から中年にかけてできるシミ(肝斑)などには、駆お血剤(活血化お薬)や当帰を含有する漢方薬の効果が期待できます。



                                    「肝斑」
20才代後半から40才代の成人女性に多くできるシミで、頬や顔、唇の回り、まぶたの周囲などに薄茶色の不定形な色素斑として表れます。
妊娠・出産時のホルモンの影響で悪化したり、ピルを服用中にもできやすいことから女性ホルモン(黄体ホルモン)の影響があるほか、顔面の光の当たる部位に発症することから紫外線が誘因である他、年齢、ストレス、疲労、食事なども関係すると考えられています。
※レバー色(明るい茶色)をしていることからこの名で呼ばれています。漢方の「肝」との関連性が認められますが、西洋医学的な意味で肝機能とは関係ないといわれます。


「肝斑」を含めた褐色〜黒色のシミ・ソバカスに対する漢方治療
 シミ・ソバカスの色が褐色から黒色を呈している場合、血流の停滞(微小循環障害)であるお血が関係していることが多いため、漢方治療では桂枝茯苓丸加よく苡仁などを中心にした駆お血剤(活血化お薬)を基本に、加味逍遙散や柴胡剤、六味地黄丸などを組み合わせて応用します。



処方名 使用目標



桂枝茯苓丸加意苡仁
桂枝茯苓丸
肌全体にくすみや荒れがある。
少腹(下腹部両側)を押すと痛みがあり、月経不順や不正性器出血、上半身ののぼせ、頭痛・肩こりなどに用いる。
桃核承気湯 上記症状が強く、顔のほてり、下肢の冷えと上半身ののぼせ、便秘を伴う
弓帰調血飲第一加減 出産後などや、イライラなど精神症状を伴う血の道症など
折衝飲 冷え性で月経痛など痛みを伴うもの
当帰芍薬散+意苡仁 妊娠中・産後にできたシミに用いる。貧血傾向で冷え性やむくみなど
加味逍遙散+意苡仁 生理が近くなると色が濃くなる、不眠、月経不順、肩こりなど
加味逍遙散合四物湯 虚弱貧血性の婦人で更年期に近くなって発生したものに用いる
柴胡桂枝乾姜湯 中年前後の疲れやすく、首から上に汗をかきやすいもの
六味地黄丸 シミは比較的色の薄い褐色を呈し、肌が乾燥気味で黄ばんでいる
加味帰脾湯 色が薄いシミで、肌などにも疲れが目立ち、熟眠感が得られないもの


●湿疹やニキビが長引いて色素が沈着し茶色に変化したものは、原因である湿疹やニキビを長引かせないような治療や体質改善を主とした治療を行います。
●顔の色素沈着の一つである目の下の隈にも、静脈の血行不良が原因で、疲れが溜まったときなど日や時間帯によって薄くなったり濃くなったりするものがあり、「肝斑」同様の治療を行います。
※その他、血行を改善する田七人参、皮膚の良貨防止作用などのあるローヤルゼリー、メラニン色素の生成を阻止する「ビタミンC+E」なども併せて使えば、より効果的です。


「清上防風湯」
清上防風湯
顔面が紅潮し、色も赤あるいは黄褐色を呈している青春のシンボル「ニキビ」に効果的です。
この度、清上防風湯の12包を新たに新発売しました。
清上防風湯は、顔面を中心とした身体上部の赤く熱を持って盛り上がった痛みや化膿傾向を伴うニキビに用いられる漢方処方です。
目の充血・顔面紅潮・口渇などをともなうことが多く見られます。原典の<万病回春>面病門の一番初めに出てくる処方です。

<万病回春>面病門
「面(顔面)に○(出来物)を生じる者は、上焦の火(が原因)なり」

清上防風湯
「上焦の火を清し、顔面に。。を生じる風熱の毒を治す。」
{防風一銭、荊芥五分、連○八部、山梔子五分、黄連五分、黄○七分(酒妙)、薄荷五分、川○七分、白○八分、桔梗八分、○殻二分、天草二分}

薬能:○風発表、清熱解毒
適応:ニキビ、吹出物、顔面充血、目充血、顔面部の湿疹や化膿性腫物
    上焦風熱(皮疹)、少陽病期・○血型、実証
補足:<漢方194法の使い方>胸部から上に充血して毒気多く、顔面や頭部、頸項部に充血性化膿症の腫れ物を起こしたもので、腫れ物、発疹は濃赤色から紫色になっているものが多い。
[便秘傾向の場合には、○下薬を併用する。→例:五物解毒湯]
※成人男性のニキビ:皮脂の分泌は20才代前半がピークで、男性の大人のニキビは思春期ニキビがそのまま継続していることが多くみられます。この場合、思春期同様、清上防風湯が効果的です。
※女性のニキビ:思春期には出ずに、20才を過ぎてから下アゴまわりのUゾーンに生じるストレスニキビ(アダルトニキビ)に悩む女性が最近激増しています。このタイプはストレスや生活習慣病に原因があるといわれていますが、特に生理前2週間からニキビが悪化するタイプが多く、この種のニキビには清上防風湯など清熱剤より○帰調血飲第一加減や桂枝茯苓丸(加意以仁)などが効果的です。



膀胱炎などの尿路感染症に用いる五淋散と他の漢方処方・製剤(一般用)の比較

■五淋散と猪苓湯合四物湯:
五淋散は猪苓湯合四物湯に比べ、圧倒的に消炎解毒・抗菌作用の生薬が多く、消炎解毒作用に優れます。
一方、猪苓湯合四物湯には、止血作用を示す阿膠が配合されていますが、五淋散は傷修復による止血作用を示します。

■五淋散と竜胆瀉肝湯:
五淋散は竜胆瀉肝湯に比べ利尿生薬が多く配合されており、膀胱や尿道の細菌を洗い流すはたらきが強いといえます。一方、竜胆瀉肝湯は消炎作用の強い竜胆草が配合されており、排尿時に尿道が焼けるように熱く感じる場合や尿に濃が混じり混濁する場合に用いますが、冷えによる膀胱炎には不向きです。

■五淋散とマンデル酸ヘキサミン(ウロナミン腸溶錠):
マンデル酸ヘキサミンは酸性尿中で加水分解され生成されるホルムアルデヒドがタンパク変性剤として作用し抗菌作用を示す尿路消毒剤です。ホルムアルデヒド(ホルマリン)は皮膚・粘膜を刺激しますが、副作用として排尿時灼熱感が約1.0%発生と報告されています。五淋散は、利尿・消炎解毒の他、傷修復促進や血流改善などを示すため、膀胱炎など尿路感染症自体とそれに伴う諸症状全般を改善します。




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