不療湯(剤型:煎じ薬)
品名(効能・効果)
不療湯
陰部湿疹
処方(松鶴堂加減)
桂皮 葛根 赤目樫 升麻 玄参 芍薬
生姜 桔梗 厚朴 甘草 大棗 陳皮 白朮 大腹皮 半夏 茯苓 蘇葉 白し かっ香
・-の桂皮・玄参の加方は衆方規矩記載
・升麻葛根湯とかっ香正気散の合方は衆方規矩記載
原典(効能・効果)
升麻葛根湯
(原典:万病回春)
感冒の初期、皮膚炎
(210処方適応症)
かっ香正気散
(原典:和剤局方)
夏の感冒、暑さによる食欲不振、下痢、全身倦怠
(210処方適応症)
処方解説
・升麻・葛根は、体表の熱証による発疹、発赤、充血、掻痒感を治す作用があります。
・芍薬は、筋肉の異常緊張を緩めます。
・生姜は、升麻・葛根の働きを助け、発汗など新陳代謝を促します。
・かっ香は、芳香健胃剤で、胃の働きを高め、また発汗、解熱の働きがあります。
・かっ香、白し、蘇葉は、協力して体表に働き、発散解熱します。
・桔梗は、気を行らせ大腸機能の調整をします。
・半夏、白朮、茯苓は、消化吸収を高め、脾胃の水分調節をします。
・桂皮は、血行を良くして、発散を助けます。
・玄参は、発疹治癒を促します。
・甘草、大棗は、諸薬の調和に働きます。
・赤目樫は、民間で消炎鎮痛剤として腫れもの、胃潰瘍などにつかわれます。
使用目標
・陰部湿疹
・身体の内側(陰)にできて、赤く痒みの少ない湿疹
松鶴堂加減について
不療湯は、升麻葛根湯とかっ香正気散を合方したものから、厚朴、陳皮、大腹皮、蘇葉を去り、桂皮、玄参、赤目樫を加えたものです。
升麻葛根湯は、麻疹、皮膚炎などで、熱のあるものなどに使われます。さらに、その様々な症状に応じて効果を増すために加減が工夫されるのですが、衆方規矩に、「発黄丹毒には玄参を加う。」「四肢厥冷には桂枝を加う。」「腰痛は当に知る。これ痘なることを。桂枝を加う。」という記載があり、この記載から発散を促して解毒、血行を良くして発散を促進するために玄参、桂皮を加味しています。また、衆方規矩で、升麻葛根湯について「癒疹を治す最上の方」といっています。
合方のかっ香正気散は、一般的には夏の風、胃腸炎などに使われるものですが、衆方規矩では、升麻葛根湯に合方して「痛みも痒みもない紅班で、なでると手にあたるもの」、「小瘡で甚だ痒いものを治す」、と書かれています。
不療湯は、これをうけて升麻葛根湯とかっ香正気散を合方、加味し、皮膚炎に使うため、胃腸に効果を期待する生薬を除いたものになっています。
赤目樫は、民間薬から腫れ物に効があるものとして加えられています。
使用上の注意
添付文書に記載の「使用上の注意」を併せて必ずご参照ください。
参考
「中医処方解説」に、かっ香正気散は、作用機序は、不明だがアトピー性皮膚炎の一部に有効とあります。
参考文献
1)漢方診療医典 大塚敬節・矢数道明・清水籐太郎 南山堂
2)漢方処方解説 矢数道明 創元社
3)漢方後世要方解説 矢数道明 医道の日本社
4)漢方方意ノート 千葉古方研究会 丸善
5)中医処方解説 神戸中医学研究会 医歯薬出版
6)衆方規矩 曲直瀬道三著・池尻勝編 燎元原