豊心 (剤型:散)脂
製品名(効能・効果)
[豊心]
歯齦炎、口内炎、食欲不振
構成生薬(松鶴堂加減)
◎桔梗末 ◎防風末 防已末 沢瀉末 ◎桃仁末 ◎升麻末
黄蓍 人参末 白朮末 茯苓末 当帰末 大棗末
桂枝 川きゅう末 地黄末 芍薬末 甘草末 生姜末
(注) ◎の4生薬は「衆方規矩」記載の八珍湯に加法の記載がある。
原処方(効能・効果)
[十全大補湯]
(原典:和剤局方)
病後の体力低下、疲労倦怠、食欲不振、ねあせ、手足の冷え貧血
(210処方適応症)
[八珍湯]
(原典 正体類要)
肝脾傷損し血気虚弱にして悪寒発熱し、或は煩燥して渇をなし、或は寒熱し昏慣し、或は胸膈利せず大便実せず、或は飲食を思うこと少なく、小腹脹痛し、或は口舌に瘡を生じ、或は歯齦腫痛し、或は便血吐血し盗汗自汗するなどを治す。
(「衆方規矩」より)
また、清熱補気湯の加減方ともとれます。
[豊心] → 桔梗、沢瀉、地黄、防風、桃仁、大棗、防已、川きゅう、生姜、升麻、白朮、当帰、甘草、人参、茯苓、芍薬
[清熱補気湯] 胃の虚熱によっておきた口内炎、舌のあれ、痛み等に。 → 升麻、白朮、当帰、甘草、人参、茯苓、芍薬、麦門冬、玄参、五味子
処方解説
・人参、白朮、茯苓、甘草、大棗、生姜は、四君子湯として胃腸機能を活発にします。
・人参は、諸臓器の機能を活発にします。
・白朮・茯苓は、胃内の停滞した水分を取り除き、胃の機能を活発にします。
・当帰、川きゅう、芍薬、地黄は、四物湯で、血行を良くして、“血虚”を改善します。
・桔梗は、俳膿作用があると共に、他薬の薬効を上に引き上げる作用があります。
・防風は、解熱、鎮痛の効があります。
・防已は、消炎、利水、鎮痛の効があります。
・沢瀉は、利尿、鎮痛の効があります。
・桃仁は、消炎性駆お血剤で、鎮痛、解毒の効があります。
・升麻は、解熱、鎮痛、解毒があり、瘡腫に効果があります。特に頭面部の疼痛に効果があり、さらに諸薬を上に引き上げる作用があります。
使用目標
疲れやすい、体力がない、顔色が悪いといった(気血両虚)人の次のような症状に。
・歯茎が腫れている。
・口内炎を起こしている。
・舌があれている。
松鶴堂加減について
豊心は、八珍湯(四君子湯合四物湯)に、または十全大補湯から黄蓍、桂皮を去ったものに、桔梗、防風、防已、沢瀉、桃仁、升麻を加えたもので、原方に比べ、消炎、俳膿、鎮痛、利水の作用が強められています。桔梗、防風、桃仁、升麻の加法は「衆方規矩」の八珍湯の部に記載があります。
また、清熱補気湯の加減法ともとる事ができます。
いずれも原方は、胃腸(脾胃)が虚して、そのために口腔内があれたり、口内炎を起こしたり、歯茎が腫れたりしている場合に使われている処方で、豊心ではさらに解熱・消炎・排膿のある生薬が加えられています。
一口メモ
・服用時、次のような所作をするとより効果的です。
しばらく口の中にふくんでいる。
口の中でうがいのようにブクブクする。
歯茎の腫れには、指につけて歯茎を軽くマッサージする。
参考事項
・体力が充実した肥満型の人の歯齦炎、口内炎については、他の製剤(防風通聖散、桃核承気湯等)のほうが良いことがあります。
使用上の注意
添付文書に記載の「使用上の注意」を併せて必ずご参照ください。
参考文献
1)漢方診療医典 大塚敬節・矢数道明・清水籐太郎 南山堂
2)漢方後世要方解説 矢数道明 医道の日本社
3)衆方規矩 池尻勝 編 燎原
4)漢薬の臨床応用 神戸中医学研究会 医歯薬出版